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時代小説に夢中

時代小説

山本兼一「火天の城」は、壮大な命がけの築城物語り

織田信長が天下をとって琵琶湖畔に築城された「安土城」は、信長の終わりと共に焼失し、幻の城と言われる。 当時としては考えられない巨大な安土城は、日本史上、はじめて高層の天守を持ち、城全体が高石垣で覆われた石の要塞であった。 しかし、期間が10年…

信長暗殺に散る五人の刺客の物語「弾正の鷹」山本兼一著

「利休にたずねよ」で直木賞を受賞した、山本兼一さんの時代小説を久しぶりに読んだ。 山本兼一さんの時代小説は面白い。まだ未読の楽しみにしている作品はとってあるので、今回は五編の短編集を手に取ってみた。 「下針(さげばり)」の主人公は、紀州雑賀…

「戦の国」を読んで、家康嫌いが確定した

家康ファンの方がいらしたら、すみません。 初の作家さんだった冲方丁さんの「戦の国」、とても面白かった。 戦国、動乱の55年を駆け抜けた、織田信長、上杉謙信、明智光秀、大谷吉継、小早川秀秋、豊臣秀頼ら六傑の視点から描く、連作短編集。 どの武将も、…

池浪正太郎の「西郷隆盛」を読んで、明治維新の真相がわかった

鹿児島、錦江湾に浮かぶ桜島 池波正太郎は、エッセイ以外はほぼ読みつくしてしまったと思っていたら、読んでいない本があった。 しかも、気になっていた「西郷隆盛」だ。 幕末ものをいくつも読んできて、西郷隆盛は明治維新の立役者の一人のはずなのに、どう…

私にとって初の時代小説作家、辻堂 魁さんの「仕舞屋侍」を読んだ

主人公は、かつて御小人目付(おこびとめつけ)として剣と隠密探索の達人だった九十九九十郎(つくもくじゅうろう)。ある事情で職を辞して、「仕舞屋」と称して事件のもみ消し屋を営んでいる。歳は50代だろうか、江戸時代ではおじいさんと呼ばれる頃合い。 …

【2023年私のベスト本】主人公編と感動編

去年の年間ベストはもう、悩むことなく断トツで「鬼平犯科帳」だった。 主人公としても、感動作品としてもだ。 revivel.hatenablog.jp 今年は外へ出る機会が増えたので、去年に比べると読書量はかなり減ったけれど、新たな分野を読んだりして、読書の幅は広…

「修羅走る 関ケ原」を読んで、関ケ原の合戦とは何だったのかを思う

関ケ原の合戦について、遠い昔にそんなことがあったくらいしか知識がなかった。 時代小説をむさぼり読むようになって、約2年半。 特に池波正太郎の作品は、戦国時代、江戸時代、幕末、それぞれが面白くて、自然に日本の歴史に興味を持つようになった。 目に…

映画「のぼうの城」は面白かったけど、小説はもっと面白かった

豊臣秀吉が天下統一をとるときに、最後まで陥落することなく、唯一落とせなかった城として名を残すことになった忍城(おしじょう)の戦い。 のぼうの城の忍城は、現在の埼玉県行田市に位置し、史実に基づいたお話です。 読後はもう 爽快! 清々しいことこの…

直木賞受賞作「利休にたずねよ」は、千利休切腹の謎を解き明かしていく物語

新たに、時代小説作家さんを探してたどり着いたのが、山本兼一さん。 最初に選んだ作品が、第140回直木賞受賞作、「利休にたずねよ」。 PHP文芸文庫紹介文 女のものと思われる緑釉の香合を肌身離さず持つ男・千利休は、おのれの美学だけで時の権力者・秀吉に…

和田竜 著「小太郎の左腕」は、鉄砲集団雑賀衆の11歳の最終兵器・・

鉄砲集団「雑賀衆」とは 「村上海賊の娘」「忍びの国」などは、かなり史実に基づいた作品であったけれど、今回は戦国時代が舞台のフィクションである。 フィクションではあるものの、「村上海賊の娘」にも登場していた、戦国最強の鉄砲傭兵集団「雑賀衆」の…

池波正太郎著「獅子」は、徳川に付いた真田昌幸の長男、信之のものがたり

かの関ケ原の戦いで、西軍に付いた父の真田昌幸、弟の幸村と別れ、家康の養女を妻にした長男の信之は東軍に属し、家康に評価されていたということは知っていた。 次男の真田幸村は、不利と分かっていても最期まで豊臣に付き、大坂冬の陣・夏の陣で後世にまで…

藤沢周平の短編集「時雨みち」

久しぶりに藤沢周平を読みたくなって、選んだのが短編集の「時雨みち」。 通勤の電車内で読むには、短編集はちょうどよい。 1979年~1981年の作品で、武家もの、市井もの11篇を収めている。 相変わらず、渋くて、男女の機微、人生のやるせなさを端正に綴って…

熊谷達也の「我は景祐」は、明治維新の影で散ったもう一人のヒーロー

2022年11月ごろから会津藩の最期に興味を持ち始め、そこから幕末、明治維新関係を読み始めた。 revivel.hatenablog.jp 今年、2023年1月に、池波正太郎著「幕末遊撃隊」を読んで、新たな実在したヒーローに感動して、幕末ものはひと区切りしたつもりでいた。 …

隆慶一郎「吉原御免状」は、家康が影武者だったというお話し

隆慶一郎を読むのは2冊目になる。 面白い。 主人公の松永誠一郎は、生後十三日目で宮本武蔵に拾われて、25歳まで肥後の山中で育てられる。武蔵の死後、武蔵の書状をもって訪れた、江戸・吉原で裏柳生との争いに巻き込まれる。二天一流の達人で、実は後水尾院…

長谷川平蔵から「死ぬことと見つけたり」の斎藤杢之助に浮気する

時代小説ばかり読むようになって2年余り。 時代小説は、市井ものから捕物帖、剣豪小説などジャンルも多く、いくら読んでも飽きることがない。 いろいろ調べているうちに、「そうか、私はチャンバラ好きなのだ・・」ということに行きついた。 そして、隆慶一…

「村上海賊の娘」は面白すぎて、一気読み

2022年のマイベスト本に挙げた、「鬼平犯科帳」以来のワクワク感でたまりませんでした。 映画化された「のぼうの城」を書かれた、和田竜による長編歴史小説。 第35回吉川英治文学新人賞 2014年本屋大賞 第8回親鸞賞 文庫本、全4巻。 1巻目は人物把握で時間が…

池波正太郎「幕末遊撃隊」は明治維新へのタイムマシン

去年2022年秋から幕末に関する時代小説を読んできた。 会津藩に興味を持ったことから始まった幕末ものも、ひとまずこれで一区切りになる。 そして、幕末の名剣士、伊庭八郎を私は知らなかった。 代々にわたる心形刀流の道場で、江戸でも名流とうたわれた剣家…

【2022年私のベスト本】池波正太郎「鬼平犯科帳」

「鬼平犯科帳」はテレビ時代劇でお馴染みの方も多いかと思います。 私は時代劇を観ていないけれど、名前くらいは知っていた。 2021年11月に池波正太郎を読むようになってから、「鬼平犯科帳」はタイトルが何となく手に取ろうとする気にならず、やっと手にし…

斎藤一を知りたくて、浅田次郎「一刀斎 夢録」を読んでみた

一刀斎・・・後ろから読むと斎藤一(知らなかった!) 斎藤一と言えば、人気アニメの「るろうに剣心」でもお馴染み、映画では江口洋介が演じていて、知っている人は多いと思う。 最強と言われ、恐れられた、新撰組三番隊組長。 どうして斎藤一を知りたいと思…

明治維新の影に、気高く生きた会津藩の人々の物語「修理さま 雪は」を読んで

会津落城の早朝、運命が一変してしまった会津藩の人々を主人公にした連作7編です。会津藩と言うと、15歳前後の武家男子を集めた白虎隊の悲劇が思い浮かんでしまいますが、史実に基づいた7人のお話は涙なしでは読めないものでした。 「修理さま 雪は」藩主…

池波正太郎「火の国の城」を読んだら、加藤清正にぞっこん

「火の国の城」は、池波正太郎の忍者シリーズ「忍者丹波大介」の続編。 私は知らずに1番最初に「火の国の城」を手に取ってしまったけれど、面白く読めました。 前作の「忍者丹波大介」は、豊臣秀吉の死から関ヶ原合戦までで、「火の国の城」はその5年後から…

藤沢周平の短編集「夜消える」の(踊る手)は教科書に載せたい

藤沢周平と言ったら、多くの作品が映画にもドラマにもなっているので、知らない人はいないと思う。 映画だけでも 「たそがれ清兵衛」(2002年 配給:松竹 監督:山田洋次 出演:真田広之、宮沢りえ)「隠し剣 鬼の爪」(2004年 配給:松竹 監督:山田洋次 出…

私の時代小説作家

2021年4月、宇江佐真理の短編集「深川恋物語」から始まった時代小説愛。 前回も書いたが、宇江佐真理を読みつくしてしまう前に、他の作家を探して山本周五郎をみつける。 この2人の作家を読んでいるうちに、澤田ふじ子、北原亜以子も読むようになる。 2021年…

心揺さぶられた、山本周五郎「さぶ」

宇江佐真理の時代小説にハマって、次々に読んでいて不安になった。 それは、また読みつくしてしまったらどうしよう。 あとに読めるものを確保しておきたいと、そわそわ。 そして、他の作家で時代小説を探そうとネットで調べたら、”不朽の名作””時代小説の金…

時代小説にのめり込んだきっかけの作品は、宇江佐真理の「深川恋物語」

1年半振りの更新になります。 その1年半前の記事にも、さらっと紹介したのですが、改めて、読んだ本を記録に残そうと思いました。 深川を舞台にした、市井の人々の切ない想いを描く、珠玉の短編集。 第21回吉川英治文学新人賞候補作。 単なる恋愛ものでは…