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時代小説に夢中

「戦の国」を読んで、家康嫌いが確定した

家康ファンの方がいらしたら、すみません。

 

初の作家さんだった冲方丁さんの「戦の国」、とても面白かった。

 

戦国、動乱の55年を駆け抜けた、織田信長上杉謙信明智光秀大谷吉継小早川秀秋豊臣秀頼ら六傑の視点から描く、連作短編集。

どの武将も、これまでとは違った視点で、そうかそうだったのか!と説得力があって、ぐいぐい引き込まれた。

脇役的な存在として知っていた、「大谷吉継」、「小早川秀秋」、「豊臣秀頼」が特に素晴らしかった。

女優の芦田愛菜ちゃんが、一番好きな武将は「大谷吉継」と言うが、何を読んでそう思ったのか。もしかしたら、この「戦の国」の大谷吉継を読んだのではないか。それにしても一番好きな武将が「大谷吉継」だなんて流石だなぁ、芦田愛菜ちゃん。

苦楽を共にした石田三成を、家康と争わせないために何度も説得にあたった。戦友であるからこそ、三成を良く知る大谷吉継は、争えば三成は死ぬと確信していた。「誰が貴様についてくるというのだ」と迫るが、結局、関ケ原へと向かうことになる。病身でありながら、負けるとわかりながら、三成に付いて行き、美しく散っていく。その三成は、ただただ、秀吉が築いた天下を、家康の私利私欲に蝕まれてはならんという思いだけであった。

 

小早川秀秋」は秀吉の養子でありながら、関ケ原で家康に寝返ったことで有名。けれど、秀秋の視点でのお話はあるのだろうか、とても共感できて今までの良くないイメージがすっかり取り払われてしまった。

慶長二年(1597年)、16歳で初陣となる秀秋に、総大将として朝鮮への渡海命令が下される。秀秋は幼少で秀吉の養子となり、寄る辺ないまま何者にもなれず過ごしていた日々を、遠く置き捨てて、朝鮮という地で生まれて初めて自分の力で思う存分、走り抜けることができたのである。この地では、日本人は誰もが異邦人で、自分がそうだったように、ここでは日本人であるというだけで、強い結びつきを感じられた。

そして関ケ原。いろんな思惑や周囲の力関係についても詳細に秀秋の視点で書かれている。秀秋の兵1万五千が欲しい家康を、秀秋は信じて東軍につくことになる。

西軍が押していたはずの戦いが、秀秋の一万五千によって一瞬にして東軍優位に変貌し、西軍は総崩れとなる。

家康は、秀吉の嫡子である「秀頼を守るため」と心にもないことを掲げて、秀吉方の武将たちを味方につけて「関ヶ原合戦」を準備していた。

利用するだけ利用して、加藤清正福島正則も毒殺される。そして関ケ原の後、秀秋は恩賞によって岡山で思いのままに藩政を行っていたが、慶長七年(1602年)に毒殺されてしまった。

そして「豊臣秀頼」については、2022年に「火の国の城」でも書いているが、今回の冲方丁さんのは良かった。タイトルは”黄金児”で、慶長五年(1600年)、数えで8歳から大坂夏の陣で自害する23歳までを秀頼の視点で書かれている。

歴史は勝者が作ると言われているが、「豊臣秀頼」を見事に表現してくれた。

自害した秀頼の骸はついに見つけることはできなかった。

余談であるが、

1980年、大坂城三ノ丸跡の発掘調査で人1人の頭蓋骨と別に首のない2人の骨、馬1頭の頭の骨が発見された。骨は人為的に埋葬されたものとみられ、頭蓋骨は20代男性のもので顎に介錯されたとみられる傷や、左耳に障害があった可能性が確認され、年齢や骨から類推する体格から秀頼のものではないかと推測された。骨は1983年、京都の清凉寺に埋葬された。wikipedia

よくぞ、よくぞ、最後に残った28人の者たち、隠してくれて、ありがとう。

そして、秀頼の妻である千姫は、家康の孫で政略的な婚姻であった。しかし大阪城を脱出した千姫は、秀頼からの書を家康に渡し、秀頼の死を慎み、秀頼は神となり、家康は地に落ちたことを思い知る。

嫌われて当然の家康であったのだ。

 

大坂の陣と言えば、日ノ本一の兵(つわもの)と称えられ、伝説となった真田信繁(幸村)。真田太平記全12巻を読み始めたものの、読み終わってしまうのが勿体なくて4巻を読み終えて止まっている。

 

本書は短編物なのでとても読みやすく面白い。是非読んでみてください。

 

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