「火の国の城」は、池波正太郎の忍者シリーズ「忍者丹波大介」の続編。
私は知らずに1番最初に「火の国の城」を手に取ってしまったけれど、面白く読めました。
前作の「忍者丹波大介」は、豊臣秀吉の死から関ヶ原合戦までで、「火の国の城」はその5年後から大坂夏の陣で豊臣家が滅亡するまでのお話です。
丹波大介は徳川の忍び甲賀を裏切り、関ケ原の合戦で真田のために働いた忍びである。今作では、秀吉の跡継ぎである秀頼を必死で守ろうとする加藤清正の忍びとなる。
「火の国の城」のもう一人の主人公が加藤清正。
加藤清正は豊臣秀吉の子飼いの家臣で、多くの武功を挙げ、肥後熊本藩初代藩主となる。そして、熊本城、名護屋城、江戸城など、城造りの名人であり、治水、土木工事、交通路の整備などに着手し、熊本の基礎をつくりあげた。
熊本観光サイトでは、死後四百年以上を経てなお熊本の人々に慕われ、愛されていると紹介されている。
そして、信義を大切にする忍者丹波大介は加藤清正に惚れ込んで、家康の甲賀忍びと死闘を繰り広げていく。
熊本城築城の時代を舞台に、裏の世界で少人数で不利と分かりながらの、かけひきと息もつかせぬ忍者戦は、ハラハラドキドキ、スリル満点。
秀吉は朝鮮出兵後、病に臥せ、信頼していた5人の家臣(徳川家康、前田利家、毛利輝元、小早川隆景、宇喜多秀家)を枕元に呼び、自分が死んだら嫡男の「豊臣秀頼」が成人するまで5人で面倒を見ることを誓わせている。
しかし、徳川家康は秀吉の死後、勢力拡大のために、秀吉が禁止していた大名間の婚姻を勝手に進めたり、様々な策略で天下をとっていく。
激怒した石田三成らの間に入って前田利家が徳川家康と話し合い、収まったようにみえたが、その後すぐ前田利家は亡くなってしまう。
うーん、秀吉に近い重要人物は次々に亡くなってしまうんだな。
あー嫌だ嫌だ、徳川家康。(私の感情)
そして家康は秀頼に、自分に会いに来いと言うわけですね。自分が天下人だと世間に知らしめたいのでしょう。
母親の淀君は怒り心頭。そりゃそうだ、秀吉が天下を取り、跡取りの秀頼がいるんだもの。
そこから加藤清正の苦労が始まる。何とか秀頼が成人になるまで戦を避けて、穏便に済ませたい。
結局、策略により家康の勢力が拡大。豊臣家の存続を願う、加藤清正・浅野幸長・片桐且元などが説得して「二条城会見」が決定。
会見の時、加藤清正は懐に短刀を忍ばせ、万一のときは家康と刺し違える覚悟だったという逸話もある。
家康は、秀頼を呼び付け、臣従を迫る予定だった。
ところがだ、秀吉の子だから猿の子くらいに侮っていた。8年振りに会った秀頼は19歳となり、しかも身長は190cm超の美形。歩む姿は威風堂々。
そして、民衆に人気があり、秀頼に寄せる期待が大きいことも家康に危機感を与えた。
立派に成長した秀頼を見て、策略家の家康はどう思うか。生かしておけないでしょうね。
加藤清正はこの会見の後、熊本へ帰る船の中で発病し死去する。
こんなことってある?!
家康め、家康め、
待てよ、そうなると、秀吉の死も怪しくなってくるではないか。
そのあとはご存知の通り、家康は大坂夏の陣を仕掛け、豊臣家は滅亡される。
これらの裏での忍びたちの暗躍も素晴らしく、上下巻だけれど一気に読めてしまいます。
ふと思う。
前田利家が生きていれば・・
加藤清正が生きていれば・・
秀頼を支え、歴史はどうなっていただろう。
そして、どうしたか。
是非是非読んでください。
池波正太郎、最高!
熊本城築城から270年後。
日本国内最後の内戦と言われる西南戦争で、新政府軍が籠城した熊本城は、52日間を制して薩摩軍は全壊。
西郷隆盛は「おいどんは官軍に負けたのではない。清正公に負けたのだ。」と言い放ったそうだ。
<参考>
これだけ家康嫌いを出してしまってから気が付いた。
観てみよう。