藤沢周平と言ったら、多くの作品が映画にもドラマにもなっているので、知らない人はいないと思う。
映画だけでも
「たそがれ清兵衛」(2002年 配給:松竹 監督:山田洋次 出演:真田広之、宮沢りえ)
「隠し剣 鬼の爪」(2004年 配給:松竹 監督:山田洋次 出演:永瀬正敏、松たか子)
「蟬しぐれ」(2005年 配給:東宝 監督:黒土三男 出演:市川染五郎、木村佳乃)
「武士の一分」(2006年 配給:松竹 監督:山田洋次 主演:木村拓哉、檀れい)
「山桜」(2008年 配給:東京テアトル 監督:篠原哲雄 主演:田中麗奈、東山紀之)
「花のあと」(2010年 配給:東映 監督:中西健二 主演:北川景子)
「必死剣 鳥刺し」(2010年 配給:東映 監督:平山秀幸 主演:豊川悦司)
「小川の辺」(2011年 配給:東映 監督:篠原哲雄、主演:東山紀之、菊地凛子)
「帰郷」(2020年 配給:時代劇専門チャンネル 監督:杉田成道、主演:仲代達矢)
と、書き出してみたら、また観たくなってくる。
それで、敢えて私が何を書くのか。
私が初めて手にした藤沢周平作品は、短編集「橋ものがたり」。
橋にまつわる10の短編ですが、解説で、井上ひさしが、「読み終えてしばらくは、人を信じてみようという気持になります。」と書いている。
ここから私は藤沢周平にのめり込んでいく。
2022年2月に、短編集「夜消える」の(踊る手)を読んで、心が洗われたと言う表現が合っているのか分からないけれど、しばらく次の短編を読む気になれなかった。
「夜消える」は市井もの7編で、レビューを見ると(初つばめ)の人気が高い。
私の推しは(踊る手)、名作です。教科書に載せたほうが良い作品。
是非、読んでほしい。
(踊る手)って、藤沢周平にしてはあまり食指が動かないタイトルだと思ったけれど、最後に意味が分かった時の心の温かさったらない。
<踊る手の冒頭>
十歳になる信次が遊びから帰って来ると、仲良しのおきみの家の前に人が集まっていた。おきみの一家は、寝たきりの年寄りを置き去りにして夜逃げをしたのを知った。婆さんは布団に寝ているが一言も喋らない。皆は何処に行ったと訊いたら、婆さんは涙を流していた、と言った。
その夜遅く借金取りが老婆を訪ね、長屋の皆でならず者を追い払った。
皆で食事の世話をすることになったのだが、何も食べず、水一杯も飲まない。このままでは死んでしまうからと、母親に呼ばれた。ばあちゃんに可愛がられていたお前が「ばあちゃん食べて」って言えば、気持ちが動くかも知れないら、食事を持って行っておくれ、と言う。
藤沢 周平(昭和2年-平成9年)日本の小説家。山形県鶴岡市出身。山形師範学校を卒業後、中学校へ赴任するが、肺結核で長期入院となり休職。退院後は新聞記者などをしながら小説を書き続けていた。昭和38年、長女を出産した年に妻が急逝したことで強い衝撃を受ける。この頃から時代小説の筆を執るようになる。
江戸時代を舞台に、庶民や下級武士の哀歓を描いた時代小説作品を多く残した。とくに、架空の藩「海坂藩(うなさかはん)」を舞台にした作品群が有名である。
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