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時代小説に夢中

ヘミングウェイ「海流のなかの島々」訳:沼澤洽治を3週間かけて読了

今週のお題「最近読んでるもの」

 

洋書を読んだ記憶は、高校生の時にマーガレット・ミッチェルの「風と共に去りぬ」くらいで、最近では2~3年前にヴィクトール・E・フランクルの「夜と霧」を読んだ。

一つの作品を読み終わるのに3週間かかったのは初めての経験だ。

時間がかかった要因のひとつは、最近の朝の通勤電車が混み過ぎて、本が開けない。次に、カタカナ名前で登場人物が多いと覚えられなくて、何度もページを行ったり来たりして遅々として進まない。時代小説の場合は、同じような長い名前でも、漢字なので読めなくてもその人が漢字としてイメージできてしまう。

マーガレット・ミッチェルの「風と共に去りぬ」は、映画が大好きだったので、登場人物は全部わかっていてスムーズだった。「海流のなかの島々」は映画化もされているので、先に観ていたらもう少し楽に読めたかもしれない。

それでも挫折せずに読了できたのは、引き込まれるところがあったからだ。

 

ちなみに、この作品はヘミングウェイの死後、1970年に遺作として出版されている。

著者の死後に4人目の妻であったメアリが発見し、誤字脱字など若干の手直しをした上で発表された。執筆時期は1950~51年頃と紹介されることが多いが、それより何年も前から構想し、執筆に着手していたとも言われる。

よく知られた話ではあるが、「老人と海」は「海流の中の島々」 の一部であった。その章の出来が良かったためか、あるいは「海流の中の島々」 の完成をあきらめたためか、理由は定かではないが切り取るような形で出版され、ご存知の通りノーベル文学賞を受賞している。海外 短編小説 解題

 

上下巻722ページ、第一部「ビミニ」、第二部「キューバ」、第三部「洋上」で構成されている。

物語に引き込まれて、電車の中ということを忘れて、あまりの衝撃に変顔を2回もしてしまったのが、第一部「ビミニ」だ。

主人公トマス・ハドソンは、ヘミングウェイ自身ではないかという事です。「ビミニ」では、美しい島で過ごすハドソンの元へ、母親の違う愛する3人の息子と旧友が訪れる。ひと夏を過ごす親子と旧友との関係、自然の描写が魅力的で、息子が巨大なメカジキと6時間の格闘をする場面はハラハラする。その後に2度の衝撃を受けることになる。そして第二部「キューバ」はなかなか進まなくて苦しかった。なかった方が良かったように思うけれど、第三部「洋上」のトマス・ハドソンを理解するためには、第一部と第二部が必要なんだろうな。

 

私は村上春樹さんが読めない人だけれど、それとはまた違う読みにくさで3週間も時間がかかったのは、自分は洋書が合わないのか?などいろいろ考えた。

それで、レビューをいろいろ見させてもらったところ、アマゾンも読書メーターも評価はとても良かったけれど、私と同じような意見も多くあったので少し安心できた。

・著者独特の簡潔で躍動感溢れる文章ではなく、どこかキレに欠けるという印象がして、若干読むのが辛かった

・あれれ?ヘミングウェイって、こんなにくどく、のろい作風だったろうか?

・登場人物が多く、なんかすごく読みづらい…ヘミングウェイは好きなんだけど…

死後に発見されて、手直しされて発表されたというところが大きいのかもしれない。

 

ラスト、仲間がハドソンに放った言葉がとても印象的だった。

「あんたって人は、自分に惚れてくれる人間のことは、何一つ分かりゃしねえ人だよ」

これは、ヘミングウェイが自身についてそう思っているという事なのか。ヘミングウェイの最期に繋がってしまうのは考え過ぎか・・

 

気になる作品はたくさんある。「誰がために鐘は鳴る」や「日はまた昇る」など、生前の作品をいつか読めたらと思う。